【書評】林總「ドラッカーと会計の話をしよう」:ストーリー仕立てで会計・経営を深く勉強できる!
目次
仕事上、企業に関わることが多いのですが、会社の情報や業績を知るためには会計の知識を持っていることが必須です。特に会計について専門的な勉強や訓練をしたことはないのですが会計本はかなり読み漁りました。その甲斐あって、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の各項目の読み方やそれらを駆使した経営分析(収益性分析、効率性分析、安全性分析等)もそれなりにできるようになりました。
会計は最初はとっつきにくかったのですが、学習が進んでイメージがつかめるようになるとがぜん面白くなり、ビジネス上でのあらゆる取引や現象を借方・貸方で整理できるという整理の美しさもあいまって、どんどんはまっていきました。
そして、会計が分かるようになると、なんとなく経営のことも理解できるようになった気でいました。
しかし、公認会計士の林總さんが執筆した「ドラッカーと会計の話をしよう」を読んで、自分の無知と傲慢さを思い知らされました。
経営の本質論と会計をつなぐ
この本は、事業の不振に苦しんでいる経営者が、たまたま飛行機で乗り合わせた初老の名経営者から、ピーター・ドラッカーの言葉を適宜引用しながら、会計・経営のレッスンを受けるという形でストーリーが展開していきます。2部構成となっており、前半は不振にあえぐイタリアンレストランのオーナー、後半は赤字経営の病院の副院長が主人公です。
会計の用語や概念はもちろん多く出てきますが、本書は単なる会計の解説書とは全く異なります。 損益計算書上黒字となっているからといって経営として儲かっているわけではない、企業として重視すべきは会計上の利益ではなくキャッシュを生み出しているかどうかである、「明日の主力商品」にこそコストをかけて育てていかなければならずそれを無視して一律にコストカットをするのはナンセンスといった、会計をどう経営に生かすかという視点が貫かれています。
本書から学ぶことはとても多く、うまくまとめることは難しいですが、僕なりの理解としては、小手先の会計テクニックを駆使して短期的に黒字を追いかけるのではなく、長期的な視野をもって価値を生み出し続けていくことこそが経営の本質であり、それを支えるために会計が存在するというものです。
まとめ
この本を読んで、会計を学んだだけで経営が分かると考えることがいかに愚かであるかを学びました。普通の会計本を読んでも書かれていない、経営の本質論が随所に盛り込まれており、会計についてある程度学習が進んで一定の知識・理解がある人はぜひ読んでいただきたいです。