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書評の道

主に本の読書感想を行っています。ジャンルは、実用書、歴史が比較的多いです。


【書評】「小さな会社の稼ぐ技術」:弱者ならではの生き残り戦略

目次

 

 

日本の会社の99%を占める中小企業ですが、その多くは大手の下請けになっていたり、過酷な労働環境が常態化したり、赤字続きと苦しい実態です。しかし、中小企業・零細企業であるという点を活かして、大手には手出しができない商売の仕方で大きな利益を出している企業も少数ながら存在しています。

 

今回紹介する栢野克己著・竹田陽一監修の「小さな会社の稼ぐ技術」(日経BP社)は、そのような中小企業でありながら独自の商品や売り方で売り上げを大きく伸ばした成功企業の実例と成功の法則を豊富に紹介しています。

小さな会社の稼ぐ技術

小さな会社の稼ぐ技術

 
 

弱者の戦略

 本書は、軍事戦略で用いられてるランチェスターの法則を応用し、圧倒的1位の企業がとるべき「強者の戦略」と、2位以下の「弱者の戦略」とを区別し、中小企業はまさにこの「弱者の戦略」をとるべきとしています。

 

そして、その弱者の戦略の特徴として次の4点を挙げます。

①差別化:強い会社と違うことをする 

②小さな1位:小規模1位、部分1位、何かで1位

③一点集中:あれこれしない。1つに絞る

④接近戦:エンドユーザーに直接営業する

 

どれもなるほどと思ったのですが、僕が特に参考になったのが、③の一点集中です。

本書では、中小企業あるいは零細個人事業主は、仕事を欲しがるあまり「何でもやります」ことをアピールすることを戒めます。

 

「うちは何でもやっているのに、なぜうまくいかないのか?」

「それは何でもやっているからです(笑)」(81p)

 

しかし、「何でもやります」は基本的に強者の戦略であり、資源も人員も豊富にある大手であればどのようなニーズにも対応でき、更にスケールメリットを生かしてコストを削減することができます。資源も人員も貧弱な中小企業が太刀打ちできるはずもありません。

そこで、「何でもやります」という全方位戦略を捨て、大手が手を出さないような分野・ニーズに絞ったほうがいいことになります。

もちろん、理屈では分かっていてもいざ実行にうつすことは簡単ではありません。

自分とライバルの実力を客観的に見比べ、勝てる商品・地域・客層に一点集中する。一言で言うと、他の9割は捨てる。言うは易し、行うは難し。勇気と決断力がいりますね(p83)

 

実行に移すことがいかに大変で勇気がいることか。それでも、大手との価格競争によりじり貧にならず売り上げを伸ばしていくためには、やってみるしかないということなのでしょう。 

 

アナログ路線も有効

 顧客に対して広告用のDMを送ったり、宣伝用のハガキを送ることは容易ですし、大手をはじめとして多くの企業が当然のように行っています。

 

しかし、本書では、印字された文書が書かれたものではなく、あえて手書きでの手紙を送ることが、顧客の心をつかむ強力な武器になることが豊富な具体例をもとに紹介されています。

 

・大量生産のチラシでも、手書きで個別メッセージを1行書いたら、オーダーメイドのチラシになります。

・弱者は、いかに手作りのところを入れるかがコツです。「そんなことは面倒くさい」というのは強者の発想です(p208) 

 

確かに、メールや郵便、チラシと大量の宣伝系の情報があふれている中、あえて手書きのメッセージが添えられているとそこに着目し、不特定多数ではなく1人の人間として認識してくれていると親近感を覚えます。

ネットが発達して情報があふれている今の時代だからこそ、あえて手書きにこだわることが大事という点はとても参考になりました。

参考になった具体例

 本書は、弱者の戦略をうまく活用して成功した企業や事業者が豊富に紹介されています。詳細は本書をお読みいただくとして、個人的に特におもしろい、参考になった と感じたのは以下の事業あるいは業態です。

 

ロゴマーク専門のデザイナー

・日報に特化したコンサルタント

・新築住宅クレームを引き受ける事業

・相見積もりの段階で御礼ハガキを出す

・不動産オーナー向けに損害保険による修繕費捻出を引き受ける

 

まとめ

分かりやすい文章で一気に読めます。一見するとレッドオーシャンで新規参入の余地はないと思われる業界であっても、視点を変えて創意工夫すれば零細事業者であっても売り上げを伸ばすことができることが豊富な実例で紹介されています。

 

 一生懸命頑張っているもののなぜか売り上げに結びつかない事業者にとっては非常に参考になると思います。