書評の道〜ビジネス書・歴史ものメイン〜

主に本の読書感想を行っています。ジャンルは、実用書、歴史が比較的多いです。


時間管理のノウハウ

本日の日経プラスワンの「何でもランキング」は達人の時間管理術がテーマで、時間管理に役立つノウハウが色々と紹介されていました。

 

いくつか参考になったものがありました。

 

目次

スケジュール表にはその日の具体的な業務を書く

  これは、タスクを細分化して、この日はこれ、この日はこれという具体的な作業内容を書いておくというものです。

  確かに、大雑把に「◯◯の件」とだけ書くと、つい後回しにしてしまいがちですが、タスクを細かく切り出すことで、その日にできることをこなし、作業を進めることができます。

 

メールを開く時間帯を決める

  メールが届く度にすぐ返信するのではなく、メールを見る時間帯を大まかに朝昼晩の3回と決めてそのタイミングで返信するという方法が紹介されています。

  書類を書いたり調べ物をしている最中に届いたメールを確認すると、その都度作業が中断して、効率が悪くなります。

  その都度返信ということに固執せず、時間帯を決めるというノウハウは目から鱗でした。

 

8割でOK

  まじめな人ほど完璧主義に陥ってしまいがちですが、時間管理の達人の多くは完璧を目指さず8割でOKという心構えでいるとのこと。

  確かに全てのことに全力投球するというのは理想ではあるのですが、それをずっと継続していくことは困難です。いつでも一定のパフォーマンスを発揮するためには完璧主義はかえってよくないということでしょう。

 

順位付けをする

  この記事には紹介されていませんが、僕が心がけているものは、その日にやるべきタスクに1番から優先順位をつけて、必ずこの日にこなすべきもの、翌日以降になってもかまわないものを区別するということです。

  タスクはいくらでも増えていき一日で全てをこなすことは絶対にできないので、その限られた時間の中で優先順位をつけることが大事と考えています。

  とはいえ、僕もまだ時間管理が上手ではなく色々と失敗もしています。今回の記事を参考にしながら、もっと効率的な時間の使い方を身に付けたいと思います。

 

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【書評】浅野佳史「たった一年で会社をわが子に引き継ぐ方法」:円滑な事業承継の秘訣

目次

わが国の法人の99%以上を占めるといわれている中小企業ですが、経営者の高齢化が進んでおり、その事業承継が大きな課題になっております。黒字続きの優良企業であっても後継者がいないために廃業せざるを得なくなるという悲惨なケースもみられます。

www.nhk.or.jp

わが国の経済を支える中小企業が存続していくためには事業承継を円滑に進めていくことが不可欠です。

後継者として最も一般的なのが社長の子どもです。しかし、そもそも子どもの方が承継することを嫌がったり、承継しても親である先代社長と激しく対立して血みどろの争いになってしまうこともあります。最近では、大塚家具の親子争いが大きな話題になりました。

 

今回紹介する浅野佳史「承継トラブルゼロ!たった一年で会社をわが子に引き継ぐ方法」は、トラブルがないように円滑にわが子に事業承継をさせるノウハウを解説しています。

 

子どもへの事業承継がうまくいかない理由

 著者は、子どもへの事業承継がうまくいかない理由の1つに、「強い経営者」によるトップダウンの問題をあげています。

現経営者が「強い経営者」であるということです。・・・・本当に苦労して会社を軌道に乗せて成長させてきた、いわゆるたたき上げの経営者である場合がほとんどです。ですから、自分と比べ、後継者である子どもをつい頼りなく思ってしまいます(p20) 。

 このような「強い経営者」と「頼りない後継者」の構図から、結局は前者から後者への一方的な指示・命令のような承継となってしまうという問題です。

   著者は、そのような一方通行型ではなく、後継者の意思も尊重した双方向のコミュニケーションがなければ事業承継は成功しないとしています。

 

 本書には、事業承継を成功に導くための手法が色々と書かれていますが、僕の方で特に参考になったのは以下の点です。

 

後継者との丁寧な対話が必要である

 上記で述べたように、現社長から後継者への一方通行型・トップダウン型の承継ではうまくいきません。

事業承継は、自らのコピーやクローンをつくり出すことではありません。事業を譲るのは、自分とはまったく違った人間なのですから、当然、その後継者に寄り添い、経営者が先導したりしながら対話を重ねつつ進めていく必要があるのです(p62)。

 この、事業承継は社長のコピー・クローンをつくるものではないという指摘はとても大事だと思いました。 現社長が創業者の場合ですと大変な苦労をして必死に会社を大きくしてきたという思いがあり、それゆえに自らが作り上げた会社への愛着が非常に強く、自らが行ってきた経営スタイルを後継者に求めてしまいがちです。しかし、わが子とはいえ、自分とは違う人間である以上、それを押し付けてしまうと後継者のモチベーションを下げたり、最悪の場合には承継すること自体を拒否されることにもなりかねません。

 後継者の個性や思いを尊重しながら、丁寧に対話をしていくことが重要と感じました。

新経営理念は後継者主導で考える

ここで優先し、尊重するのは、あくまでも後継者が「どういう会社をつくっていきたいか」という意思です(p104)。

 現社長としては、会社のことを隅々まで分かっているがゆえに、つい将来の会社の方向性についても決めがちです。しかし承継後に会社を引っ張っていくのは後継者であるので、後継者が自分で考えて決めなければ事業承継した意味がありません。当然親心もあるのでしょうが、つい口出ししたくところを抑えるという自己抑制が社長には求められるということです。 

 

後継者の強みを生かす

すべてを底上げしよう、後継者を万能な経営者にしようとすると必ず失敗します。ここではどうすれば後継者の強みを活かせるか、さらに伸ばせるかを念頭に置き、今後の方針を決めてください(p114)。 

 本書で何度も指摘されているとおり、現社長と後継者は全く別の人間であり、その個性や性格も異なる以上、現社長と同じ能力を求めることは非現実的です。現社長からみれば、頼りないと思ってしまう面はあるにせよ、欠点にばかり目を向けるのではなく、後継者の持っている長所や強みに着目していくことが重要です。

 

引退セレモニーの開催

 事業承継を円滑に進めるためには、現社長が潔く引退しあれこれと口うるさく指示したり頻繁に出社することを控える必要があります。しかし、自分が育ててきた会社への愛着もあって、なかなかそのふんぎりをつけることは難しいです。それを解決するために、著者は、仕入れ先や取引先も交えて経営者の引退セレモニーを開催するという方法を提案しています。このセレモニーによって、経営者は自身の花道を飾ることができ、気持ちに区切りをつけることができるということです。また、同時に、後継者を中心とする新体制のお披露目の絶好の機会にもなるとのことです。

 このアイデアは非常に素晴らしいと思いました。

まとめ

 本書を読んだまとめとして、事業承継を円滑にするためには、結局は現社長と後継者の丁寧な対話、そして現社長は後継者を自分とは違う人間であると認識してその意思を十分に尊重し、承継の道筋がついた時点で潔く引退することが重要であると感じました。

 事業承継について悩んでいる中小企業の経営者、事業承継に携わる税理士等の専門家にとって、とてもためになる本だと思います。 

 

 

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【書評】「日本一社員がしあわせな会社のヘンな”きまり”」:超ホワイト企業の実態が分かる

目次

 

不景気と呼ばれて久しい日本経済ですが、少子高齢化が進む中では今までより一層生産性を上げていくことが求められます。国の調査によると、日本の全会社のうち中小企業が占める割合は99%以上とされ、中小企業が成長して利益を出していくことが大事ですが、中小企業の多くは下請けで大手からの受注に依存し、赤字経営も常態化しているなど、苦しい状況が続いています。また、社員の給与も低く、サービス残業が当たり前というところも多いように思います。

しかし、中小企業であっても創意工夫次第では、社員の待遇を充実させながら売り上げを伸ばしていくことができます。今回紹介する本の著者の会社がまさにそうです。

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”

 

著者の山田昭男さんは、未来工業株式会社の創業者です。未来工業は、創業以来赤字にはならず業績を伸ばし続ける優良企業で、社員の平均給与600万円で残業なし、年間休日140日という労働者にとってスーパーホワイト企業ともいうべき存在です。

 

  本書では、山田さんがどのような思いでこの驚異的な会社を作ってきたのかが書かれています。

 

1 徹底的な差別化

 山田さんが心がけているのは、ある意味で非常にシンプルで、徹底的に差別化するということです。同業他社と同じことをしても利益が出ないのであれば、他と違うことをするという発想です。未来工業がすごいのは、その差別化をとことんまで突き詰めるところです。

  例えば次のような方策です。

うちは、何をするにもよそと差別化する方針だから、「提案書を出したら封を切る前に500円を支給する」ことにした(19頁)。

  このアイデアは衝撃でした。普通は、会社に役に立つ優れた提案を審査した上で報奨金の支給を決めるものだと思います。それを、中身も確認せずに提出だけで支給するというのは尋常ではありません。しかし、社員が実名で提案するという以上、あまりに適当なアイデアを出すと社内での評判にかかわるのでモラルハザードには歯止めはかかりますし、提出さえすればよいということで提案をしやすくなり結果として会社に有益なアイデアが出ることが期待できるので、よく考えられた合理的な方針だと思います。

  

2 社員をコスト扱いしない

 徹底的な差別化という考えは社員への待遇にも現れています。

人をコスト扱いするなと言いたい。例えば会社が月に30万円払うところを15万円で済んだとしようか。しかし、同じことをさせておいて半分しか払わないのに、パート社員が正社員と同じ気持ちで仕事をすると思うか?働くわけがないだろう(92頁)。

 慈善の精神からではなく、会社の利益につながるというある意味でドライで合理的な考えから社員の待遇面を充実させるということです。残業を禁止したり休日を増やすのも、社員のモチベーションを上げて会社の利益向上につなげるためです。

 

3 まとめ

常に考える。他人と差別化する。いいと思ったことは恐れず行動に移す。だめならすぐに戻す(175頁)。

企業が成長するために差別化が大事ということは既に言い尽くされているところです。ただ、差別化を中途半端ではなく、突き詰めて徹底し尽くすことが大事であると実感しました。

 

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今年の目標

明けましておめでとうございます。

一年の計は元旦にありという言葉もあるので、今年一年で取り組んでみたいこと、達成したいことをまとめてみようと思います。

 

 

1 早起き

常々早起きしようと思っているのですが、結局夜更かししてしまったり二度寝の誘惑に負けてしまい、なかなか早起きができませんでした。

朝の方が集中力もあるし、仕事や家事の効率性を考えると早朝の時間は確保したいです。毎朝6時起床(ゆくゆくは5時半起床)を目指していきたいです。

 

2 毎日日記をつける 

 つい日々を過ごすだけになりがちですが、その日の出来事のうち良かったところと反省すべきところを毎日記録化して可視化することは、自分を客観視して今後の成長につなげるために役立ちそうです。毎日続けるというのはラクではないですが、習慣化して続けていきたいと思います。

 

3 ブログ記事をコンスタントに書く

昨年8月にブログを始めましたが、結局11月と12月は殆ど記事を書けませんでした。毎日更新とはいかなくても、せめて週一のペースで続けていこうと思います。

 

 

結局、どんなことでも続けていくということが大事でありながら難しいと思います。今年は続けていけるようにしたいです。

 

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今年読んだ本の中で面白かったもの

久しぶりの投稿です。

 

いよいよ今日で2016年も終わりですね。

自分の振り返りも兼ねて、今年読んだ本の中で面白かったものを紹介しようと思います。

 

 

1 会計参謀

 

会計参謀-会計を戦略に活用する-

会計参謀-会計を戦略に活用する-

 

 

  今まで読んできた会計本の中でダントツです。難解で無味乾燥な解説になりがちな会計が、経営戦略の上でどのように生かされるのかをわかりやすく説明してくれています。これを読んで会計の重要さ、奥深さを改めて知ることができました。

 

書評はこちら

【書評】会計参謀-会計を戦略に活用する:会計と経営戦略とのつながりがよくわかる! - 書評の道

 

2 騙されてたまるか

 

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

 

 伝説の記者と呼ばれる清水潔さんの調査報道に取り組む姿勢が分かる本です。公の発表や大手メディアの報道を鵜呑みにせず、疑問に思った点は徹底的に調べ尽くすという姿勢は大いに参考になりました。

 

書評はこちら

【書評】清水潔「騙されてたまるか」 - 書評の道

 

3 ワタミの失敗

 

ワタミの失敗  「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造

ワタミの失敗 「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造

 

ブラック企業というレッテル貼りがされることの恐ろしさと、それを見据えた対応(特に初動対応)をすることの重要さが学べました。

 

書評はこちら

【書評】「ワタミの失敗」:ワタミは本当にブラックだったのか? - 書評の道

 

4 失敗学のすすめ

 

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

 

 失敗をいたずらに恐れるのではなく、むしろ成長をするための種としてポジティブに捉え、失敗から学ぶことの重要さを説明してくれています。とかく、日本社会では失敗は悪というイメージが強く、そのために慎重になりすぎて大胆な挑戦を避けて成長できないという悪循環に陥っているように思います。もちろん致命的な失敗は避けなければなりませんが、失敗を許容するとともに失敗から学ぶという姿勢を持つことが大事だと気付かされました。

 

5 中国傑物伝 

  

中国傑物伝 (中公文庫)

中国傑物伝 (中公文庫)

 

 中国史研究の大家である陳舜臣さんが、古代から近代まで中国史上の英雄を取り上げて、その生涯を生き生きと描いています。曹操王安石といったメジャーな人物だけでなく、学校の教科書には載っていないマイナーな人物にもスポットを当てており、中国史の魅力を再認識させてくれました。個人的には、宦官ということで過小評価されがちな明の鄭和の業績と傑出した才覚が分かった点がとても面白かったです。

 

 

書評ブログを名乗っていながら今年はあまり書評の記事が書けませんでした。来年こそはもっとペースを上げて記事を書いていきたいと思います。それでは皆様良いお年を。

 

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【書評】林總「ドラッカーと会計の話をしよう」:ストーリー仕立てで会計・経営を深く勉強できる!

目次

 

仕事上、企業に関わることが多いのですが、会社の情報や業績を知るためには会計の知識を持っていることが必須です。特に会計について専門的な勉強や訓練をしたことはないのですが会計本はかなり読み漁りました。その甲斐あって、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の各項目の読み方やそれらを駆使した経営分析(収益性分析、効率性分析、安全性分析等)もそれなりにできるようになりました。

会計は最初はとっつきにくかったのですが、学習が進んでイメージがつかめるようになるとがぜん面白くなり、ビジネス上でのあらゆる取引や現象を借方・貸方で整理できるという整理の美しさもあいまって、どんどんはまっていきました。

そして、会計が分かるようになると、なんとなく経営のことも理解できるようになった気でいました。

しかし、公認会計士の林總さんが執筆した「ドラッカーと会計の話をしよう」を読んで、自分の無知と傲慢さを思い知らされました。

 

ドラッカーと会計の話をしよう (中経の文庫)

ドラッカーと会計の話をしよう (中経の文庫)

 

経営の本質論と会計をつなぐ 

この本は、事業の不振に苦しんでいる経営者が、たまたま飛行機で乗り合わせた初老の名経営者から、ピーター・ドラッカーの言葉を適宜引用しながら、会計・経営のレッスンを受けるという形でストーリーが展開していきます。2部構成となっており、前半は不振にあえぐイタリアンレストランのオーナー、後半は赤字経営の病院の副院長が主人公です。

会計の用語や概念はもちろん多く出てきますが、本書は単なる会計の解説書とは全く異なります。 損益計算書上黒字となっているからといって経営として儲かっているわけではない、企業として重視すべきは会計上の利益ではなくキャッシュを生み出しているかどうかである、「明日の主力商品」にこそコストをかけて育てていかなければならずそれを無視して一律にコストカットをするのはナンセンスといった、会計をどう経営に生かすかという視点が貫かれています

本書から学ぶことはとても多く、うまくまとめることは難しいですが、僕なりの理解としては、小手先の会計テクニックを駆使して短期的に黒字を追いかけるのではなく、長期的な視野をもって価値を生み出し続けていくことこそが経営の本質であり、それを支えるために会計が存在するというものです。

まとめ

この本を読んで、会計を学んだだけで経営が分かると考えることがいかに愚かであるかを学びました。普通の会計本を読んでも書かれていない、経営の本質論が随所に盛り込まれており、会計についてある程度学習が進んで一定の知識・理解がある人はぜひ読んでいただきたいです。

 

長谷川秀夫教授の過労死「情けない」発言の炎上について思うこと(出所の確認が大事という話)

電通の女性新入社員が自殺したことについて労災認定が下りたとのニュースが話題になりました。

夢と希望を抱いて会社に入ったはずなのに自ら命を絶つことを選択してしまったことはあまりに痛ましく、またご遺族の心情を思うと言葉もありません。女性のものとされるツイッターから窺われる限り、労働時間だけでなく精神的に追い詰められるようなひどい職場環境だったようです。電通は今回の事件を踏まえて原因究明を徹底するとともに再発防止に真摯に取り組んでほしいと思います。

 

このニュースに関連して、武蔵野大学の長谷川秀夫教授が「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」と投稿したことで、大炎上しています。ツイッターを始めとして、ネット上で長谷川教授批判のコメントで溢れています。

僕もこの発言は批判されて当然と思いますが、今回の記事の趣旨は、この発言の当否を論じることではありません。

電通の自殺女性に対する発言ではなかった

ネットで確認する限り、長谷川教授の発言を批判するコメントはほぼ例外なく、長谷川教授が自殺した女性に対して「情けない」と発言したことを前提としています。

例えば、こちらのNAVERまとめでも、タイトルからして「電通社員の高橋まつりさん過労死に」「情けないと発言」としています。

武蔵野大学 長谷川秀夫が電通社員の高橋まつりさん過労死に残業100時間超で自殺は情けないと発言し炎上 - NAVER まとめ

 

僕も当初は、電通社員の自殺についてなされた発言と思っていました。しかし、どうやら、この発言は、過労死白書が発表されたという報道を受けてなされたもののようです。元のコメントが削除されているので断言はできないのですが、保存されているこちらのキャプチャを見ると、過労死白書の報道に言及する形の発言となっていることが分かります。

Imgur: The most awesome images on the Internet

 

つまり、長谷川教授は、自殺した電通の女性に対して情けないと発言したわけではなかったことになります。

過労死白書発表の報道と、電通の自殺した社員の労災認定の報道が期せずしてほぼ同時期になされたことで、「情けない」発言が女性の自殺についてなされたものという誤解が広まったものと思われます。

批評するときはその発言の出所を確認することが大事

 もちろん、自殺した女性に対して直接向けられた発言ではないからといって、過労死を情けないと発言したことは非難されて当然でしょう。

しかし、ある人の発言を批評(肯定、否定どちらも含む)する際には、その発言がどのような文脈で何に向けてなされたのかという前提となる事実関係を正確に押さえておく必要があると思います。その前提部分が誤っていると、そもそも議論がかみ合わず、かえって的外れな批評となる危険があります。

その意味では、女性の自殺についてなされた発言であることを前提として批判するのはやはりアンフェアではないかと思います。

今回のような炎上事件では、問題となった発言やコメントが次々と拡散していき批判のトーンも激しくなります。その流れにすぐに乗ってしまうと、無自覚のうちに、誤った事実関係を前提とした批判となっている危険性があるので、やはりその問題となった発言の出所を自ら確認する必要があるのではないかと思いました。

 まとめ

色々と偉そうなことを書きましたが、僕もたまたま見た記事の中で「情けない」発言が過労死白書に対してなされたものであることを知ったので、もしこの記事を見なかったら、過労自殺した女性に対して「情けない」と発言したのだと思い込んだままだったと思います。

そのため、 改めて発言の出所を確認する必要があることに気づかされたので、自戒を込めて今回記事にさせていただきました。