書評の道

主に本の読書感想を行っています。ジャンルは、実用書、歴史が比較的多いです。


【書評】佐原雅史「知財戦略の教科書」 膨大な情報がお金に変わる?

目次

 

市場が成熟し、消費者のニーズが多様化・複雑化した現代では、ただ機能の良い製品を作っても売れるというわけではありません。会社は創意工夫を凝らして自己の市場を守り、あるいは新規に開拓して生き残りをはかっていかなければなりません。

とはいえ、具体的にどうすればよいのか?そこで重要な役割を果たすのが「知財」すなわち知的財産です。今回紹介するこの本は、知財を戦略的に活用して企業経営に生かしていく方法について書かれています。

 

知財=特許ではない

 

知財というと、どうしても特許や商標、著作権といった法律で保護された権利をイメージします。しかし、本書が取り扱っているのは、そのような法的保護の対象となるものに限定されておらず、日々の企業活動で発生する情報全般です。著者は、これを「知識資料」と定義します。

 

まずは、従業員が収集したり、作成したりした、再利用価値のあるすべての情報を「知識資料」と認識してください。顧客リスト、名刺リスト、クレーム情報、市場調査、実験・試験データ、開発ノート、アイデアメモ、設計図、商品パンフレット、企画提案書など、これらはすべて「知識資料」です(30~31頁)。

 

 

 

本書が特徴的なのは、この知識資料を①顧客に関する情報である「販売先資料型」、②商品アイデアについての「アイデア資料型」、③業務マニュアルである「マニュアル資料型」の3つに類型化しているところです。その上で、自社の業務のタイプによってこれらの3つの資料の重要度が変わってくるとします(例えば、メーカーであればアイデア資料型、サービス業であればマニュアル資料型というように)。会社における情報をこのような視点で整理した本はあまり見当たらず、目から鱗でした。

知識資料の活用が大事

 

そして、この知識資料をいかに戦略的に活用していくことが重要であるとします。

知財戦略では、知識資料の「蓄積」「換金」「 守り」の3S活動を、部門間で協力して、バランスよく実行していくことを心がけます(42頁)。

特に印象に残ったのは、従業員個々のアイデアやノウハウを会社全体で共有化していつでも取り出せる状態にしておくことが大事という点です。確かに、従業員はそれぞれ独自の工夫を凝らしたり貴重な経験を積んでいるにもかかわらず、その情報が共有されないまま捨てられてしまうのは大きな損失です。様々な情報が組み合わさって化学反応が起こってイノベーションのきっかけとなることも考えると、知識資料の蓄積と共有化はとても大事だと感じました。もっとも、ただ情報を蓄積していっても、膨大なゴミが増えるだけにもなりかねないところなので、このあたりの取捨選択をどうするかは課題だと思いました。

知財戦略=権利化ではない

知財戦略というと、特許をとって守るというイメージがありますが、本書は、そのような権利化だけではなく、知識資料を隠して守る(ノウハウ化)ほうがよい場合もあるとし、安易な権利化に注意を促しています。特許をとると、アイデアを公開しなければならないため、公開によって発明の価値を大きく損なうような場合にはむしろ特許ではなく、ノウハウ化によって隠すほうがよいということです。

まとめ

日々の業務で生まれた情報でもそれが蓄積されると宝の山になり、うまく活用すると売上増大に寄与できるということが分かりました。企業においては知識資料を戦略的に生かすため、知識資料についての従業員の意識を変えていくことが大事だと思いました。