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【書評】出口治明「仕事に効く教養としての『世界史』」:世界史の見方が変わる!

目次

 

グローバル化が進んで他国との距離が近くなってくるにつれ、それぞれの国の成り立ちを知っておかなければならないということで、世界史の勉強が大事だという声をよく聞きますし、世界史特集も増えているように思います。とはいえ、教科書を読んでも、人物や出来事が時系列に沿って淡々と書かれるだけで、正直退屈なことが多いですよね。

しかし、出口治明「仕事に効く教養としての『世界史』」を読めば、世界史の見方が大きく変わります。

 

仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

 

著者の出口治明さんは、 ライフネット生命の会長兼CEOというバリバリの経営者ですが、他方で稀代の読書家としても知られまた歴史の造詣も深いということで、様々な本を執筆したり著名人と対談したりと大活躍されていますね。

出来事の羅列ではなく「生きた」歴史を知る面白さ

 本書は、訪れた世界の年が1000を超え、読んだ歴史書は5000冊以上という出口さんが独自の切り口で世界史を解説してくれています。

冒頭の奈良時代の女帝の説明からまず目から鱗が落ちました。出口さんは、奈良時代に多く誕生した女帝(持統天皇元明天皇等)は、同時期に大活躍していた中国の則天武后ロールモデルとして頑張ったのではないかという説を述べておられ、男性の中継ぎという従来の見方に疑問を投げかけます。この説が学術的にどこまでの信憑性があるのかは知りませんが、日本だけではなく同時代の中国にまで視野を広げて柔軟に考えてみるという発想はとても刺激的でした。

他にも、中国を理解する四つの鍵、キリスト教とローマ教会・教皇との関係、人工国家という視点でとらえたアメリカとフランスの特異性といった興味深いテーマが取り上げられており、どのテーマでも新たな発見があり読んで飽きません。

高度経済成長期は例外という認識

出口さんは、終章で日本のことに触れており、戦後の高度経済成長は幸運が重なった例外的な時代だったという認識を持つべきと指摘します。

つまり、戦後、中国は共産党が支配したので、アメリカにとってアジアで残されたパートナーは日本しかいなかったこと、人口が増え続ける、朝鮮戦争による特需が発生する、そういった幸運が何重にも重なったから実現したというものです。あくまでも例外的な時代だったのであるから、それをスタンダードとして考えるべきではないという主張には大いに共感できました。

組織も人も、高度成長期の成功体験が忘れられず、それを前提とした古い考え方で突き進んでしまっている例は多いと思います。

歴史の大きな流れの中で、それぞれの時代を冷静に客観的に分析していくという視点が大事であると気づかされました。

まとめ

 歴史が嫌いという人、苦手意識がある人にこそぜひ読んでもらいたい本です。単なる出来事の羅列ではなく、出口さんならではの鋭い切り口からの解説に魅了されることでしょう。

 

 

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