書評の道〜ビジネス書・歴史ものメイン〜

主に本の読書感想を行っています。ジャンルは、実用書、歴史が比較的多いです。


自分宛メールを電話メモにすることによる仕事効率化

目次

 

電話のやりとりをメモにする必要があること

仕事をしているときに電話は避けられませんよね。自分でかけるときもあれば、相手からかかってくるときもあります。

重要なやりとりもあれば優先度が低いものもありますので、一概にはいえませんが、重要なやりとりがなされた場合には後々のことを考えてメモにして記録化する必要があります。

従来僕は、電話台の横にメモ帳を置いて電話でのやりとりを手書きで記載したものを電話メモにするという方法をとっていました。しかし、そのメモ自体が紛失したり、資料の山に埋もれてメモ帳を見つけることができなくなるということを何回か経験しました。そこで、よい電話メモのとりかたや保存の仕方について悩んでいたところ、ある仕事仲間からメールを電話メモとして活用するという方法を教えてもらい、それがとても役に立ちました。

 

メールを電話メモにする具体的な方法

これは以下のような手順で行います。

1 電話をする際にメールソフトを立ち上げ、宛先を自分にするメール画面を開く

2 電話でのやりとりをリアルタイムでメール本文に打ち込む(受話器を片方の耳で挟み、両手で打ち込む)

3 電話終了後、「クライアント名+電話メモ」を件名に記載する

4 メール送信(自分宛にメールが届く)

 

この方法は次のようなメリットがあります。

検索が容易となる

電話メモがメールの形で受信フォルダに入るので、クライアント名やキーワードを打ち込むことで検索することができます。ある程度時間が経ってから「どんな内容の会話だったかな?」と思い出すときにも、これで検索するとすぐに見つけることができ便利です。ただ、メールボックスには容量の限界があるのでその点には注意が必要ですが。

 

自働的に日付が記録される

電話メモでは通常日時の記載が必須です。しかし、上記の方法だと電話メモがメールの形で自分宛に送られてくるので、そこに受信日時が自動的に記録されており、改めて日付を記入する必要がありません。

 

メモをなくす心配がない

紙のメモだと紛失の危険があります。僕自身、あまり資料の整理が得意ではなくメモをなくすこともありました。しかし、メールで電話メモを作成する方法だと紛失の心配をする必要がありません。

 

 

この方法をとりいれてから、電話メモの管理がとても楽になりました。

参考にしていただけたら嬉しいです。

東芝問題で考えた、自分の市場価値を意識することの大切さ

東芝がアメリカの子会社の原発事業での7000億円を超える巨額の損失で深刻な経営危機が生じており、連日大きなニュースになっています。

東芝は2015年に不正会計問題が発覚したことを機に、昨年から社員の給与カットをしましたが、今回の巨額損失問題を受けて新年度もこの給与カットを継続する方針のようです。

www3.nhk.or.jp

 

巨額損失問題はいわば経営戦略の失敗というべきで、社員には何の責任もないのに、給与をカットされるのはたまったものではないでしょう。

しかし、当然のことですが、社員の給与は企業が負担するものである以上、企業の経営が傾くと給与減額やリストラが実施されるのは不可避です。

 

東芝といえば日本を代表する大企業で、就職先の人気も高く、ここに就職できれば一昔前は「勝ち組」とみなされていたはずです。しかし、いかに知名度が高く、就職先としての人気が高い企業であっても、いつ潰れてしまってもおかしくないことが、今回の一件で改めて分かりました。「大企業だから安心」という考えは今の時代においては、非常に危険ということでしょう。

東芝の社員の方でも、会社への恩義を感じていたり、あえて経営危機にある企業の中で仕事をするという貴重な経験を積むことに魅力を感じることで、給与カットされてでもなお残りたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、そのような積極的な動機ではなく、本当は転職したいのに自分の市場価値の評価が低く有望な転職先が見つからず、不本意ながら会社に残らざるを得ない方もいると思います。

 

やはり、いつ会社が潰れてもおかしくないと考え、定期的に自分の経験や実績を棚卸して、仮に転職する場合に自分の市場価値はどの程度で評価されるのかを検証しておく必要があるように思います。そして、自分の市場価値が高く評価されないという場合は、どのようなスキルや実績、資格が求められているのかを検証して、それを身に付けることも重要でしょう。

 

今回の東芝の一件で、自分の市場価値を常に意識するともに、時代の最先端にアンテナを張って研鑽を積むことの重要さを改めて感じました。

 

【書評】「小さな会社の稼ぐ技術」:弱者ならではの生き残り戦略

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日本の会社の99%を占める中小企業ですが、その多くは大手の下請けになっていたり、過酷な労働環境が常態化したり、赤字続きと苦しい実態です。しかし、中小企業・零細企業であるという点を活かして、大手には手出しができない商売の仕方で大きな利益を出している企業も少数ながら存在しています。

 

今回紹介する栢野克己著・竹田陽一監修の「小さな会社の稼ぐ技術」(日経BP社)は、そのような中小企業でありながら独自の商品や売り方で売り上げを大きく伸ばした成功企業の実例と成功の法則を豊富に紹介しています。

小さな会社の稼ぐ技術

小さな会社の稼ぐ技術

 
 

弱者の戦略

 本書は、軍事戦略で用いられてるランチェスターの法則を応用し、圧倒的1位の企業がとるべき「強者の戦略」と、2位以下の「弱者の戦略」とを区別し、中小企業はまさにこの「弱者の戦略」をとるべきとしています。

 

そして、その弱者の戦略の特徴として次の4点を挙げます。

①差別化:強い会社と違うことをする 

②小さな1位:小規模1位、部分1位、何かで1位

③一点集中:あれこれしない。1つに絞る

④接近戦:エンドユーザーに直接営業する

 

どれもなるほどと思ったのですが、僕が特に参考になったのが、③の一点集中です。

本書では、中小企業あるいは零細個人事業主は、仕事を欲しがるあまり「何でもやります」ことをアピールすることを戒めます。

 

「うちは何でもやっているのに、なぜうまくいかないのか?」

「それは何でもやっているからです(笑)」(81p)

 

しかし、「何でもやります」は基本的に強者の戦略であり、資源も人員も豊富にある大手であればどのようなニーズにも対応でき、更にスケールメリットを生かしてコストを削減することができます。資源も人員も貧弱な中小企業が太刀打ちできるはずもありません。

そこで、「何でもやります」という全方位戦略を捨て、大手が手を出さないような分野・ニーズに絞ったほうがいいことになります。

もちろん、理屈では分かっていてもいざ実行にうつすことは簡単ではありません。

自分とライバルの実力を客観的に見比べ、勝てる商品・地域・客層に一点集中する。一言で言うと、他の9割は捨てる。言うは易し、行うは難し。勇気と決断力がいりますね(p83)

 

実行に移すことがいかに大変で勇気がいることか。それでも、大手との価格競争によりじり貧にならず売り上げを伸ばしていくためには、やってみるしかないということなのでしょう。 

 

アナログ路線も有効

 顧客に対して広告用のDMを送ったり、宣伝用のハガキを送ることは容易ですし、大手をはじめとして多くの企業が当然のように行っています。

 

しかし、本書では、印字された文書が書かれたものではなく、あえて手書きでの手紙を送ることが、顧客の心をつかむ強力な武器になることが豊富な具体例をもとに紹介されています。

 

・大量生産のチラシでも、手書きで個別メッセージを1行書いたら、オーダーメイドのチラシになります。

・弱者は、いかに手作りのところを入れるかがコツです。「そんなことは面倒くさい」というのは強者の発想です(p208) 

 

確かに、メールや郵便、チラシと大量の宣伝系の情報があふれている中、あえて手書きのメッセージが添えられているとそこに着目し、不特定多数ではなく1人の人間として認識してくれていると親近感を覚えます。

ネットが発達して情報があふれている今の時代だからこそ、あえて手書きにこだわることが大事という点はとても参考になりました。

参考になった具体例

 本書は、弱者の戦略をうまく活用して成功した企業や事業者が豊富に紹介されています。詳細は本書をお読みいただくとして、個人的に特におもしろい、参考になった と感じたのは以下の事業あるいは業態です。

 

ロゴマーク専門のデザイナー

・日報に特化したコンサルタント

・新築住宅クレームを引き受ける事業

・相見積もりの段階で御礼ハガキを出す

・不動産オーナー向けに損害保険による修繕費捻出を引き受ける

 

まとめ

分かりやすい文章で一気に読めます。一見するとレッドオーシャンで新規参入の余地はないと思われる業界であっても、視点を変えて創意工夫すれば零細事業者であっても売り上げを伸ばすことができることが豊富な実例で紹介されています。

 

 一生懸命頑張っているもののなぜか売り上げに結びつかない事業者にとっては非常に参考になると思います。

 

 

新聞記事の切り抜きによる情報整理の効用

 

1月6日のNHKあさイチプレミアムトークに池上彰さんが出演しており、新聞の活用の仕方や情報整理術等をレクチャーしていました。

 

そのときの感想をまとめた記事はこちらです。 

muyuyu.hatenablog.com

 

上記の記事でも紹介していましたが、池上さん流の新聞の情報整理術が大変参考になりました。

具体的には、

すべての記事を丹念にチェックしない

紙面を最初から最後までざっと見た上で気になる記事だけを新聞から切り取ってクリアファイルに入れて保管

切り抜いた記事をテーマごとに分けて必要に応じてそれを確認する

 というものです。

 

番組を見てから、さっそく僕もこの方法を実践するようにしました。1か月程度続けてみた結果、今までよりも新聞を使えているという実感を持てるようになりました。

この方法を使うことの効果を僕なりにまとめました。

1 実行のハードルが低くすぐに取り入れることができる

 新聞というと、すべての記事をしっかり読まないといけない気になっていました。しかし、丹念に読まないと思うあまり、なかなか読む時間がとれないというのでは本末転倒です。それに比べ、ざっと見て気になるところだけ切り抜くという方法は全く難しくなく、時間もかからないので続けやすいです。

2 改めて読むことで記憶が定着する

 1回読んだだけではなかなかしっかりと覚えることは難しいですが、切り抜いた記事を改めて参照することで記憶が定着するという実感があります。また、他の記事と組み合わせて読むことで、新たな発想が生まれることもあります。 

3 時間を置いて記事を過去化することで、現在との比較ができる

 新聞というのは、そのときの最新のニュースを伝えるもので速報性が高いものが多いです。しかし、時間が経つと当然その記事は過去のものとなります。ある程度時間が経ってから改めて過去の記事を読むことで、現在と比べて政治家がどのような言動をしていたか、また新聞記者や編集委員がどのような視点で報道していたかを比較することができ参考になります。

 例えば、1月21日の日経では、トランプ新政権に関してメキシコ国境に壁を作るという公約の現実味に乏しいと評しており、実行に移される可能性は低いという視点でした。しかし、現実には、トランプ大統領は壁を作るという大統領令に署名しており、単なるパフォーマンスではないことが明らかになりました。

www.bbc.com

 このように過去記事を参照することで、メディアが予想していたことが現実には外れたということが浮き彫りになり、記事を鵜呑みにしてはいけないという教訓にもなりました。

 

 

いかがでしょうか。切り抜き作業はごく短時間ですることができ、忙しいビジネスパーソンにもおすすめの方法です。もっとも、僕も新聞をうまく活用できているとはまだいえません。継続は力なりということで、今後もコツコツ続けていくことでもっと深い分析ができるようにしたいと思います。

 

 

1月に読んだ本まとめ

今日で1月も終わりですね。

自分の振り返りも兼ねて、今月読んだ本をまとめてみようと思います。

 

 

山田昭男 「日本一社員がしあわせな会社のヘンなきまり」 

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”

 

どんな小さなことでも徹底的に差別化することの重要さを学びました。

 

書評はこちら 

muyuyu.hatenablog.com

 

 

浅野佳史「たった一年で会社をわが子に引き継ぐ方法」 

高齢化が進み事業承継が深刻な問題となっている中、どうすれば円滑に事業承継できるかが分かりやすくまとめられています。理屈だけではなく人間同士の密なコミュケーションが必要ということ。

 

書評はこちら

muyuyu.hatenablog.com 

  

「The BOOKS green 365人の本屋さんが中高生の心から推す『この一冊』」  

THE BOOKS green 365人の本屋さんが中高生に心から推す「この一冊」

THE BOOKS green 365人の本屋さんが中高生に心から推す「この一冊」

 

 本屋さんがおすすめする本がバラエティーに富んでいて面白かったです。本を紹介するメッセージがどれも熱くて本屋さんの情熱が伝わってきました。

 

書評はこちら 

muyuyu.hatenablog.com

 

茂木誠「経済は世界史から学べ!」

経済は世界史から学べ!

経済は世界史から学べ!

 

 経済という切り口で歴史を学ぶことの重要さと面白さを学ぶことができました。経済に苦手意識がある人にはおすすめです!

 

書評はこちら 

muyuyu.hatenablog.com

 

出口治明「ビジネスに効く最強の『読書』」 

ビジネスに効く最強の「読書」

ビジネスに効く最強の「読書」

 

 傑出した読書家である出口さんの愛読書を垣間見ることができます。実用書、小説、自然科学に社会科学、日本のみならず西洋や中東と、この人の守備範囲はどれだけ広いのかと驚嘆しました。

 

半藤一利出口治明「世界史としての日本史」 

昭和史研究の第一人者である半藤さんと出口さんが、主に戦前の日本をテーマとして対談したまとめです。歴史の造詣が深いお二人ならではの鋭い分析や視点に何度も目から鱗が落ちました。

 

佐藤優「世界観」

世界観 (小学館新書)

世界観 (小学館新書)

 

 元外務省の官僚で現在は職業作家として大活躍している佐藤さんによる、世界情勢について分析・予測した本です。楽観論や希望的観測を排し、徹底したリアリズムに立っており、外交とはこのようにして考えていくのかと大変勉強になりました。

 

 

時間管理のノウハウ

本日の日経プラスワンの「何でもランキング」は達人の時間管理術がテーマで、時間管理に役立つノウハウが色々と紹介されていました。

 

いくつか参考になったものがありました。

 

目次

スケジュール表にはその日の具体的な業務を書く

  これは、タスクを細分化して、この日はこれ、この日はこれという具体的な作業内容を書いておくというものです。

  確かに、大雑把に「◯◯の件」とだけ書くと、つい後回しにしてしまいがちですが、タスクを細かく切り出すことで、その日にできることをこなし、作業を進めることができます。

 

メールを開く時間帯を決める

  メールが届く度にすぐ返信するのではなく、メールを見る時間帯を大まかに朝昼晩の3回と決めてそのタイミングで返信するという方法が紹介されています。

  書類を書いたり調べ物をしている最中に届いたメールを確認すると、その都度作業が中断して、効率が悪くなります。

  その都度返信ということに固執せず、時間帯を決めるというノウハウは目から鱗でした。

 

8割でOK

  まじめな人ほど完璧主義に陥ってしまいがちですが、時間管理の達人の多くは完璧を目指さず8割でOKという心構えでいるとのこと。

  確かに全てのことに全力投球するというのは理想ではあるのですが、それをずっと継続していくことは困難です。いつでも一定のパフォーマンスを発揮するためには完璧主義はかえってよくないということでしょう。

 

順位付けをする

  この記事には紹介されていませんが、僕が心がけているものは、その日にやるべきタスクに1番から優先順位をつけて、必ずこの日にこなすべきもの、翌日以降になってもかまわないものを区別するということです。

  タスクはいくらでも増えていき一日で全てをこなすことは絶対にできないので、その限られた時間の中で優先順位をつけることが大事と考えています。

  とはいえ、僕もまだ時間管理が上手ではなく色々と失敗もしています。今回の記事を参考にしながら、もっと効率的な時間の使い方を身に付けたいと思います。

 

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【書評】浅野佳史「たった一年で会社をわが子に引き継ぐ方法」:円滑な事業承継の秘訣

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わが国の法人の99%以上を占めるといわれている中小企業ですが、経営者の高齢化が進んでおり、その事業承継が大きな課題になっております。黒字続きの優良企業であっても後継者がいないために廃業せざるを得なくなるという悲惨なケースもみられます。

www.nhk.or.jp

わが国の経済を支える中小企業が存続していくためには事業承継を円滑に進めていくことが不可欠です。

後継者として最も一般的なのが社長の子どもです。しかし、そもそも子どもの方が承継することを嫌がったり、承継しても親である先代社長と激しく対立して血みどろの争いになってしまうこともあります。最近では、大塚家具の親子争いが大きな話題になりました。

 

今回紹介する浅野佳史「承継トラブルゼロ!たった一年で会社をわが子に引き継ぐ方法」は、トラブルがないように円滑にわが子に事業承継をさせるノウハウを解説しています。

 

子どもへの事業承継がうまくいかない理由

 著者は、子どもへの事業承継がうまくいかない理由の1つに、「強い経営者」によるトップダウンの問題をあげています。

現経営者が「強い経営者」であるということです。・・・・本当に苦労して会社を軌道に乗せて成長させてきた、いわゆるたたき上げの経営者である場合がほとんどです。ですから、自分と比べ、後継者である子どもをつい頼りなく思ってしまいます(p20) 。

 このような「強い経営者」と「頼りない後継者」の構図から、結局は前者から後者への一方的な指示・命令のような承継となってしまうという問題です。

   著者は、そのような一方通行型ではなく、後継者の意思も尊重した双方向のコミュニケーションがなければ事業承継は成功しないとしています。

 

 本書には、事業承継を成功に導くための手法が色々と書かれていますが、僕の方で特に参考になったのは以下の点です。

 

後継者との丁寧な対話が必要である

 上記で述べたように、現社長から後継者への一方通行型・トップダウン型の承継ではうまくいきません。

事業承継は、自らのコピーやクローンをつくり出すことではありません。事業を譲るのは、自分とはまったく違った人間なのですから、当然、その後継者に寄り添い、経営者が先導したりしながら対話を重ねつつ進めていく必要があるのです(p62)。

 この、事業承継は社長のコピー・クローンをつくるものではないという指摘はとても大事だと思いました。 現社長が創業者の場合ですと大変な苦労をして必死に会社を大きくしてきたという思いがあり、それゆえに自らが作り上げた会社への愛着が非常に強く、自らが行ってきた経営スタイルを後継者に求めてしまいがちです。しかし、わが子とはいえ、自分とは違う人間である以上、それを押し付けてしまうと後継者のモチベーションを下げたり、最悪の場合には承継すること自体を拒否されることにもなりかねません。

 後継者の個性や思いを尊重しながら、丁寧に対話をしていくことが重要と感じました。

新経営理念は後継者主導で考える

ここで優先し、尊重するのは、あくまでも後継者が「どういう会社をつくっていきたいか」という意思です(p104)。

 現社長としては、会社のことを隅々まで分かっているがゆえに、つい将来の会社の方向性についても決めがちです。しかし承継後に会社を引っ張っていくのは後継者であるので、後継者が自分で考えて決めなければ事業承継した意味がありません。当然親心もあるのでしょうが、つい口出ししたくところを抑えるという自己抑制が社長には求められるということです。 

 

後継者の強みを生かす

すべてを底上げしよう、後継者を万能な経営者にしようとすると必ず失敗します。ここではどうすれば後継者の強みを活かせるか、さらに伸ばせるかを念頭に置き、今後の方針を決めてください(p114)。 

 本書で何度も指摘されているとおり、現社長と後継者は全く別の人間であり、その個性や性格も異なる以上、現社長と同じ能力を求めることは非現実的です。現社長からみれば、頼りないと思ってしまう面はあるにせよ、欠点にばかり目を向けるのではなく、後継者の持っている長所や強みに着目していくことが重要です。

 

引退セレモニーの開催

 事業承継を円滑に進めるためには、現社長が潔く引退しあれこれと口うるさく指示したり頻繁に出社することを控える必要があります。しかし、自分が育ててきた会社への愛着もあって、なかなかそのふんぎりをつけることは難しいです。それを解決するために、著者は、仕入れ先や取引先も交えて経営者の引退セレモニーを開催するという方法を提案しています。このセレモニーによって、経営者は自身の花道を飾ることができ、気持ちに区切りをつけることができるということです。また、同時に、後継者を中心とする新体制のお披露目の絶好の機会にもなるとのことです。

 このアイデアは非常に素晴らしいと思いました。

まとめ

 本書を読んだまとめとして、事業承継を円滑にするためには、結局は現社長と後継者の丁寧な対話、そして現社長は後継者を自分とは違う人間であると認識してその意思を十分に尊重し、承継の道筋がついた時点で潔く引退することが重要であると感じました。

 事業承継について悩んでいる中小企業の経営者、事業承継に携わる税理士等の専門家にとって、とてもためになる本だと思います。 

 

 

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